🕊️ 自然な看取りができた理由——ご家族の揺るがない想い

自然な看取り

99歳のSさんを看取らせていただきました。
これまで多くのお看取りに寄り添ってきましたが、今回ほど“自然で美しい最期”はなかったと感じています。

その理由はたった一つ——
ご家族が、最初から最後まで揺らぐことなく“自然な看取り”を受け入れていたこと。

🌿 Sさんと過ごした日々

Sさんは3年ほど施設で生活されていました。
食事は一年ほど前からほとんど召し上がらず、栄養ゼリーを少しずつ介助で口にする程度。それでも体重は大きく減ることなく、起きていれば外を眺め、穏やかな時間を楽しむ方でした。

お元気な頃に一緒に作った歌があります。

『お天気てんき、お庭が光る、
ピカピカ光って青葉が繁る、
お天気てんき、お天気てんき、
あ〜あ〜お天気良いなぁ〜』

何度も何度も、Sさんは嬉しそうに一緒に歌ってくれました。

床擦れもなく、穏やかな日々。
そんな中で腸炎のため入院され、病院では点滴などの治療が始まりました。

🌿 治療の終わりと“老衰”という現実

しばらくすると腸炎は回復しました。
しかし、99歳の身体はもう食事を受け付けません。

・病気は治った
・でも、食事は摂れない
・点滴を続ければ“生かすこと”はできる
・しかしそれは延命であり、自然ではない

これはもう、老衰なのです。
病院ではこれ以上の治療はなく、退院となりました。

ご自宅での看取りも選べますが、ご家族も高齢。
最期は慣れ親しんだ場所で、、、と施設での看取りを希望されました。

ここで、ご家族は迷いませんでした。

🌿 ご家族が選んだ“自然な看取り”

ご家族は初日から力強い姿勢を示されました。

  • 食事は無理にしない。自然に。
  • 水分も無理に与えない。自然に。
  • 点滴はしない。
  • 延命はしない。
  • 自然な流れに身を任せる。

この“揺れなさ”こそが、Sさんを苦しませず、穏やかな時間を守る一番の力になります。

「母らしく最期まで」
その覚悟は、言葉ではなく態度でしっかり伝わっていました。

そしてターミナルケアの20日間が始まりました。

🌿 “日常”がそのまま続く20日間

Sさんが再び施設へ戻った瞬間、職員全員で
「Sさん、おかえり〜!」
と迎えました。

血圧も脈も安定しており、表情は穏やか。
お口はほとんど開きませんが、飲める日は50〜100ccほどトロミ茶を口にしてくださいます。

娘さんはこまめに面会に来られ、写真を撮ったり景色を一緒に眺めたり。
顔を覚えていないはずなのに、娘さんがそばにいると安心した笑顔になる——その姿に、家族のつながりの力を感じました。

そして、20日間の中で私たちが特に心に残っている日があります。

ある暖かい午後、天気が良かったのでスタッフと一緒に庭へ散歩に出ました。
外が好きなSさんは、風や光を感じるように目を細めて、とても穏やかな表情をされていました。

その日は、お茶を飲んだり、また散歩に出たり、小さな“好き”をいくつも重ねる時間でした。
笑顔があまりにも優しくて、私たちは写真をたくさん撮りました。

後日、その写真をお部屋の壁に貼ると、訪れた職員がひとつ、またひとつとメッセージを書き足していき、
Sさんのお部屋は日ごとに、温かい言葉と笑顔で満ちた空間へと変わっていきました。

まるで、小さなギャラリーのように。

職員たちの思いが形になって広がっていく様子は、Sさんの人生が周りの人を優しく照らしているようでした。

🌿お茶を100ccも飲んだ!

そして19日目。
全く飲めなくなっていたはずのSさんが、なんと100ccのお茶を美味しそうに飲み干したのです。
凄いね〜✨ たくさん飲んだね〜✨

帰り際、私に向けて見せてくれた笑顔。
「あぁ、もしかしたら…」と胸の奥で静かな予感がありました。

その夜、Sさんは息を引き取られました。
とても穏やかに、眠るように。

🌿 ご家族がくれた言葉

ご家族は涙ではなく、深い感謝の思いを私たちに向けてくださいました。

部屋に貼った写真や職員のメッセージは、そのまま大切に持ち帰られました。

“この施設で本当に良かった”
その言葉は、私たち職員にとって何よりの宝物でした。

🌿 自然な看取りが成立する条件

今回、改めて強く感じたことがあります。

自然なお看取りが穏やかに進むかどうかは、
ご家族の“揺れない受容”によって決まる。

・不安が強ければ、点滴を求めて延命に向かう
・迷いがあれば、食事介助を強いることになる
・周囲が揺れれば、本人の身体のペースが乱れる

しかし、今回のご家族は最後まで一貫していました。

“母らしく、生まれたままのペースで旅立たせてあげたい”

その覚悟が、Sさんの穏やかな最期を守ったのです。

🌿 おわりに

老衰の看取りは、決して悲しみだけの時間ではありません。
家族と職員が同じ方向を向いたとき、
人はこんなにも自然に、安らかに旅立つことができます。

Sさん、どうか天国でも“お天気てんき”の歌を歌いながら、穏やかな時間を過ごしてくださいね。
たくさんの学びと温かい時間を、本当にありがとうございました。

🌿 Sさんとの時間が、皆さんの看取りの参考や心の支えになれば嬉しいです。
 

   🌸最後までお読みくださりありがとうございました🌸

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